人生最大の岐路は、「るるぶ」という旅雑誌のペンション無料招待に当選したことがそもそものきっかけとなった。70年代後半から80年代前半頃というのは、俗に言う「ペンションブーム」で、会社を定年退職した人や、都会に嫌気がさし田舎で民宿みたいなものを経営したいという若い夫婦たちが、長野県の原村や軽井沢などをはじめ全国各地にペンションを建て始めた。しゃれた洋風建築とリーズナブルな料金設定がうけ爆発的な人気となり、オンシーズンには予約が取りにくい状況が続いたほどだった。
その頃の私には子供が二人いて、どこかに泊まりに行くとすれば国民宿舎や民宿がもっぱらだった。そんな時「るるぶ」という雑誌に人気のペンション特集なる記事があり、読者無料招待という企画があって、それに応募したらめでたく当選したのだった。11月のもう既に寒い原村を、私たち夫婦は子供を親に頼んで、二人で訪れた。旅には必ずギター持参で、時には彼女と二人で、時には宿泊している人たちと一緒に歌ったものだ。フォークソング全盛の時代、歌う歌には事欠かなかった。
私たちが初めて訪れたペンション。そこのオーナー夫妻が実にいい人たちで、私たちは意気投合して夜中までいろいろな話に興じていた。将来は二人で喫茶店みたいなものをやりたいという話をすると、ペンションをやったらどう?と真剣に応じてくれた。
私たち夫婦は今、長野県にいる。はじめて泊まった(それも無料で、ワインもサービスしてくれた)ペンションでの一夜が、私たちの人生を大きく変えたのだ。
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