文化・芸術

2008年10月 8日 (水)

良い役者がまた逝った・・・追悼 緒形拳

また一人個性俳優(という呼び方はよいものか)が舞台から去った。「太閤記」というテレビドラマで緒形拳という役者を知ったのだが、一番印象に残っている作品は映画「復讐するは我にあり」だった。佐木隆三の原作を前に読んでいたので、どんな作品に仕上がっているのか興味津々で観たのを覚えている。

まさに圧巻だった。主人公の持つぎらりとした性格を、全身で、とりわけ鋭い眼で表現していた。良い役者は、静かなたたずまいでわかるのではないだろうか?今の若い俳優で力がある人は本当に少ない。大声を出したり、泣いたり笑ったりはだれでもできる。

71歳で舞台を去ってしまうとは実に惜しい。悔しい。もっと色々な役を観たかった。
明日から最後の出演作品が始まる。涙を流しながら観ることになるだろう・・・

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2008年9月22日 (月)

堀 文子さんのこと

「サライ」という中高年向きの雑誌を時々読んでいるのだが、90歳になる画家堀文子の「命といふもの」なる絵とエッセイが、俄然おもしろい。

「東京駅」という文章の中で彼女は言う。「高層ビルの建設ラッシュの波をのがれ、朱煉瓦(あかれんが)の東京駅が残されたのは、明治・大正の先達の知性を守る賢明な選択だった。併し・・・改札口の中にまで飲食街が出現する有様。公共の便利と安全を受け持つ鉄道は、先ず乗客の安全と利益になる施設に心を配ってほしい」「飲食店だけはふえるが、旅疲れの人の腰をおろすベンチは少ない。すべてが機械化して、不なれな乗客の困惑に答えてくれる駅員が見当たらない」
「公共の乗り物だった筈の鉄道が今は経済優先の事業になり、儲けにならぬ乗客への心くばりが、目に見えて姿を消して行く。東京駅を通る度に、日本という国の品位の下落が気にかかってならない」

まさにその通りだと思う。鉄道職場についていえば、鉄道事業に関わりたいと思って就職しても配属先がコンビニかもしれないという現実がある。それも組合活動で当局に反対でもしようものなら、その現実度は大きくなってしまうようだ。そんな現実がJR尼崎や羽越線の人身事故を、労働者を虫けらのように扱う不当労働行為がまかり通る否定すべき現状を生み出しているのだ。

人を個人としてみることなく、経済優先の思想がどうなっていくか・・・答えはもう既に明らかになっているのではないか?堀文子さんの考え方をちょっとは見習おうよ。
ああそれなのに、コイズミ改革を評価する53%、「改革」路線を継続すべき55%(日経クイックサーベイ調査)という恐るべき現状。次期衆院選も甘い見通しを立ててはいけない。絶対に反動自公政権にその座から退いてもらおう。

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2008年6月19日 (木)

桜桃忌

高校時代、太宰治の作品に触れ、そのみずみずしい感性と、研ぎ澄まされたひとつひとつの文章に私は心をすっかり捕らえられてしまった。
友人たちとガリ版刷の「文集」を作り、そこにへたな小説や詩を載せたり、彼の作品について語り合ったり、反体制的な活動をはじめたりとおそらく太宰の影響は少なくなかったのではないかと思う。

「人間失格」や「斜陽」がやはり太宰の代表作であろうが、私のいちばん好きな作品は日記風に書かれた「正義と微笑」である。青年時代の若者の感性をあれほどまでに胸に迫る文章で書き上げた太宰。彼の死は自殺だったが、それ以外に道はなかったのかもしれない。

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2008年5月16日 (金)

アンカー展を見た

久しぶりに美術館へと足を運んだ。見に行ったのは、スイスの画家、アルベール・アンカーの展覧会。今月の18日までの開催なので混んでるかなと思って出掛けたのだが、そこが地方都市の美術館の良いところ、駐車場は無料だし、観客もそれほど多くなく、ゆっくりと作品を見ることが出来た。

全部で102の作品が展示してあるらしいが、そのほとんどが油彩や水彩の人物画である。一枚一枚がなんともいえず、優しさにあふれている。光によって変化する髪、生きているような手の存在感、洗いざらしのようなシャツのしわの一つ一つが、まるで音を奏でているかのようだ。

文学もそうだが、絵画をはじめとする美術も批評はむずかしい。結局は人それぞれの好き嫌いなのだから。アルベール・アンカー・・・私の好きな画家がひとり増えたのは、確かだ。

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